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笹幸恵
2023.8.25 14:03皇統問題

倉山迷文、ここに極まれり。

『SPA!』8/29・9/5合併号の倉山満の記事を読んだ。
なんというか、日本語がおかしい上に
何が目的なのかわからない理屈をこねくり回し、
迷走しまくって着地点が全く不明という
見事な「迷文」を披露している。
10回くらい熟読したが、やはり何が言いたいのかわからない。
が、ちょっと整理してみよう。

倉山は言う。

吉例を探し、時代に合わせて、准じて、変えて、
大枠を守る。これを繰り返してきたから、
皇室は一度も途切れることが無い伝統を
守ってこれたのだ。

先例は絶対だと書いていたのに後退している。
先例原理主義は返上か。
まあいい。
で、何が伝統なのかを語らないまま、
「結婚によって民間人の女性が皇族になれたのは、
近代になってから」という“研究者の言説”を否定しにかかる。
「思いつきでやったのではない」
「先例を整理しただけ」

思いつきだなんて、誰が言ったの?
また勝手な解釈を付け加えちゃって。
その思考回路、いい加減に何とかしなさいよ。
そもそもこの言説を取り上げた理由は何なのか。
独りよがり過ぎて全く意味がわからない。
うんと忖度して代弁するなら、

「民間人の女性が皇族になれたのは近代になってから」
  ↓
つまり近代になって柔軟に皇室制度の運用を変えている
  ↓
だから今、皇位継承を双系にするという変更があってもいい
  ↓
ボクちゃんはこれを否定したい

こんなところだろうか。
その手始めとして、明治の皇室典範は
「思いつきではなく先例を整理しただけ」だと主張。
その先例を「人臣皇后」などといって縷々述べる。
が、途中で「女性の地位の高さ」に話が飛んでいる。
しかもそれが少しも「地位の高さ」の例になっていないので、
読者はより混乱する。
「天皇の母となった女性は
『国母』としての地位を得た」
「後継者となる男子を生んだ女御が、
かつての皇后のような地位になった」
いずれにしても、皇室において、
女性の地位は高かった。

バカなの?
生んだ子によって待遇が変わること自体、
女に対する差別ではないか。
「女は子供を産む機会」と言っているようなもの。
その無自覚さは知性の欠如ゆえか。
挙げ句「治天の君」に担ぎ上げられた西園寺寧子の例をあげて、
「ほーら、こんな例があるのだから、
近代に思いつきで民間人が皇族になれたわけじゃないでしょ」
と言っているのだ。

バカなの?
例外はあくまで例外。
1の事例をその他の99に当てはめて論じるなどもってのほか。
だいたいこんなウルトラCは、倉山が最も忌み嫌う
「先例破り」ではないか。批判して然るべきだろう。
自分にとって都合良く解釈し、つまみ食い。
首尾一貫しないから信用されないんだよ。

そして古代史と近代史のみに着目することを批判し、
その間の時代が「大枠」を守るためにいかに柔軟な運用をしてきたか、
その「大枠」とは「民間人の男を皇室に入れたことは
一度もないこと」だと述べている(やっと主題が出てきた!)。

だけど旧宮家の男系男子は、今は現代社会を
自由に生きる「民間人」ですよ。
「准皇族」ではないですよ。
何度言ってもわからない倉山は、
自身が「君臣の別」という「大枠」から
大きく外れようとしていることに気がつかない。
しかも混乱した頭で、こんな結論を出している。

ここまでの歴史を通観して、ご理解いただけただろうか。
前近代は何が結婚かもわかりにくいのだが、
天皇と結婚した女性の立場を。
皇女にはなれないが、准皇族より上だ。

え!?
主題は「女性の立場」だったの?
で、なに? 「准皇族より上」って????
勝手に序列をつくりあげてるし。
それで読者が「なるほど女の地位は高いわね」と納得するとでも?
女が女というだけで天皇になれないのはなぜか、
という大きな命題への答えになっていない。
しかも「何が結婚かもわかりにくい」なら、
それを現代にそのまま当てはめるのは相当慎重でないとね?
女御だの中宮だのとせっせと知識自慢しているのを
自分で台無しにしているのわかってる??

こうした歴史を踏まえて、明治に
「結婚した時点で皇族となる」と整理したのだ。
その場の思い付きではない。

だから、誰が思いつきだなんて言ったのさ。

皇室は奥深い。先例を学ぶから、
時代に合わせられるのだ。

そっくりそのまま返す!
もーーーー笑うしかありません!

「男系男子が伝統(=大枠)」という縛りを
いったん解いてみれば、こんな論理が破綻した
こじつけを並べなくても済むのに、じつに残念な人だ。
何としても結論を男系継承にしたいがために
歴史をつまみ食いし、予断を持って解釈または曲解し、
破綻していることにさえ気づかないほど、
自分の知識をひけらかすことに必死。
じつに気の毒な人だ。
倉山は『文藝春秋』の「佳子さまからの警告」を読め!
読んでもわからんだろうけど。
自分の知識自慢で承認欲求を満たしている場合じゃないんだよ!


最後にひとこと。
倉山は一般国民なので、何を主張しても自由だ。
だが、読み手に一切伝わらない文章表現は
せめて編集者さんが何とかしてあげないと。
本人、頭がこんがらがっているんだから、なおさらだ。
迷文ここに極まれり。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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